アビス3

アビスグループは大阪の10代の男女を中心に結成され、ぼったくりバーの経営をしながら、対立組織と抗争を繰り返し、短期間のうちに大阪で最大級の半グレ集団に上り詰めた。準暴力団に認定され、警察の壊滅作戦で解散したが、解散後に元幹部らが六代目山口組系組織に加入したり、神戸山口組ナンバー2の自宅を襲撃するなどの事件を起こしている。


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アビスグループの経歴

アビスグループは、当時15~6歳だった菅野深海をリーダーとして、2015年頃に中学生を含む10代の男女を中心に結成されたとみられる。

リーダーの菅野は大阪府大阪市鶴見区の出身で、中学生の頃に同級生などと共に暴走族『大阪連合』を結成し、総長を務めた。総合格闘技大会の元王者が代表を務めるジムでキックボクシングを習っていて、アマチュアの大会にも出場していた。

アビスのメンバーは、大阪の繁華街の京橋で客引きなどのキャッチを始め、その後にミナミやキタなどに進出。2017年頃からガールズバーなどの経営などを始めたとされる。



短期間で大阪最大の半グレ集団に

アビスが経営するガールズバーでは客にぼったくりを働き、資金を獲得して行った。メンバーに店の売り上げを競わせ、売り上げが悪いメンバーには制裁を加えるなどしていたため、ぼったくりが加速して行ったとみられる。

アビスは菅野を頂点として、ナンバー2の金庫番、12人の幹部、各幹部が担当するそれぞれのガールズバーには代表、ボーイ、ホステス兼キャッチ、スカウトが居て、他にケンカや代金の回収役など暴力担当、スカウトや女の管理担当、金の管理や飛ばし携帯の用意担当、薬物の調達や売買担当、などの役割に分かれていたという。

一時期は大阪の半グレグループ『拳月グループ(アウトセブン)』と合流して活動していたが、仲違いして別々に活動するようになり、その後は拳月グループと対立した。

アビスは10代が中心なのにも関わらず、短期間で急速に勢力を拡大し、対立する他のグループらと20回以上も抗争を繰り返し、アビス系列の店は約20店舗にも増え、最盛期には300人以上もの構成員が所属し、大阪で最大の半グレグループになった。

店の売り上げは月に計5000万円以上で、そのうち約2000万円がリーダーの菅野が受け取っていたとみられる。店の売上の一部である30~50万円を毎月、絆會(任侠山口組)系組織もしくは六代目山口組系組織の暴力団組織に上納しているともされた。

リーダーの菅野は、格闘技をやっていたこともありケンカが強く、逆らうと集団でリンチするなどの残虐性もあって、『ミナミのヒトラー』と言われていたという。


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10代の頃の菅野深海



残虐な手口でぼったくりを繰り返す

警察は、10代が中心で急速に勢力を拡大したアビスについて詳しく把握していなかったが、アビス系列店でのぼったくりの被害相談が年間150件もあり、料金トラブルが相次いでいたため、2018年04月頃にアビスを準暴力団に認定した。

2018年06月、経営するガールズバーでぼったくりの支払いを拒否した客の男性を監禁し、暴行を加えて財布などを盗む事件が発生。アビスメンバーらが傷害や監禁致傷などの疑いで逮捕された。

被害男性は、大阪のミナミの繁華街でキャッチに「飲み放題で1時間3000円」だと言われ、連れられてアビス系列の店に入店したが、次々と料金を水増しされたため、支払いを拒否。すると携帯電話と財布を取り上げられ、系列の店舗に拉致され、便器の水を飲まされた。

男性が嘔吐すると、アビスメンバーは「カーペットのクリーニング代払え」と因縁をつけ、最終的に65万円を請求。取り上げた携帯電話を開き、電話帳を見せ「誰に言うたら肩代わりしてくれるんや」と脅した。

男性は知人に電話し、知人が察して警察に通報した。警察が周辺の防犯カメラを分析し、店に突入すると、14時間も監禁されリンチされた男性が発見された。男性はあばら骨を折る重傷を負っていたという。

この事件を発端に、警察は90人体制で捜査本部を設置し、アビス壊滅作戦を開始。アビス系列のガールズバーなど約20店舗を無許可営業で摘発した。


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逮捕されたアビス幹部



アビス壊滅作戦、約60人を摘発

アビスは10代の少女らを使い、大阪のミナミなどの繁華街で「飲み放題で1時間3000円」だと通行人や酔っぱらいなどに優しく声を掛け、系列のガールズバーに連れ込む。店内で接客をする少女らが「1杯いただいていいですか」とドリンクをねだる。女性のドリンクは1杯5000円で、キャッチ時には説明しない。

その他にもサービス料などで料金を膨らまし、客に強い酒を飲ませて酔い潰させるなどして、高額な支払いを請求するという手口だったという。

支払いを拒んだり払えない客には携帯電話、財布、腕時計など貴金属を奪い、近くのATMで現金を引き降ろさせたり、別の系列店舗に拉致し、知人に電話させて代金を肩代わりさせたり、監禁して集団でリンチを加えるなどの行為を繰り返し働いていたとみられている。

アビスは約1年間の間に、約260人の客から計2200万円以上もぼったくっていたという。

2018年08月、対立する他の組織のバー経営者の男性を襲撃するため、凶器を用意してミナミの路上に集結し、関係者に催涙スプレーを撒いたとして、菅野らが凶器準備集合や暴行などの疑いで逮捕された。

2018年12月頃までに、アビスのメンバーら約60人が摘発された。壊滅状態に陥ったアビスは解散届を提出し、解散した。


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壊滅状態となったアビス



解散後も複数の事件を起こす

逮捕されていたメンバーのほとんどが、2019年03月頃までに釈放されたとみられているが、リーダーの菅野らは保釈中にも複数の事件を起こしている。アビスは解散届を提出したものの、偽装解散や名前を変えて復活しているなどと言われた。

2019年05月、18歳未満の少女を22時以降に客引きや、店内での接客をさせたとして、菅野らが風営法違反などの疑いで書類送検された。

2019年11月、メンバーの妹と交際していた男性を待ち伏せし、暴行を加えたとして、菅野らが傷害の疑いで逮捕された。

2019年12月、高齢者にウソの電話を掛けて現金を騙し取ったとして、メンバーらが詐欺の疑いで逮捕された。アビスメンバーを含むこの詐欺グループが関与した事件は計21件に及ぶという。

2020年07月、トラブルになっていたキャバクラの経営者の男性を襲撃するため、凶器を持って大阪市淀川区の路上に集結し、経営者の男性らに集団で暴行を加えたとして、菅野らが凶器準備集合と傷害の疑いで逮捕された。


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複数回逮捕された菅野深海



元メンバーらが暴力団に加入か

警察からの集中取り締まりを受けたアビスは崩壊したとみられている。複数のメンバーが服役し、すでに出所している幹部らもいるが、一部のメンバーらは今も悪事を働いているとみられ、六代目山口組系組織に加入した者もいるとされる。

2021年11月、アビスメンバーだったラッパーが、著書『さらばアビス』をサイゾー社から出版した。

2022年05月、アビス幹部だった男が、神戸山口組副組長を務める二代目宅見組の入江禎組長の、大阪府豊中市にある自宅に車で突っ込み、建造物損壊の疑いで逮捕された。元幹部は、アビス時代から付き合いがあった六代目山口組系組織の関係者になったとみられている。

2022年05月、アビスメンバーだった男ら3人が、大阪のミナミの路上で通行人に因縁を付け、暴行するなどして傷害の疑いで逮捕された。この元メンバーらも、アビスの解散後に六代目山口組系組織に加入したとみられている。



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