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2015年10月20日、暴力団に詳しいジャーナリストの第一人者である溝口敦と、長年暴力団と対峙して来た弁護士の久保利英明が日本外国特派員協会で会見を行っていた。

山口組が分裂して以降、溝口敦が公の場所で会見を行ったのは初めてで、会場には海外や日本の記者が沢山集まっており注目度が高かったようだ。


日本外国特派員協会とは

日本外国特派員協会は公益社団法人であり、日本に派遣されている外国報道機関の特派員及びジャーナリストのために運営されている会員制のプレスクラブであるようだ。

政治家の会見や党首討論なんかも外国特派員協会で行われていることが多い。日本ではタブーな内容のものも取り扱われており、外国特派員協会で新たな情報が発表されても日本の既存メディアがスルーしてしまうこともあった。

そんな外国特派員協会で溝口敦と久保利英明の会見が行われた。その内容を簡単にまとめてみることにする。





今の日本は暴力団にお金を払う経済システムではない

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久保利英明は45年にも及ぶ弁護士活動のほとんどがヤクザと対峙するものだったという。その久保利弁護士の主張をザックリとまとめてみる。

久保利が弁護士になった初期の頃は倒産事件を手掛けることが多かったという。会社が倒産するとヤクザが潰れた会社を毟り取りに来るが、1980年代に入ると景気が良くなりあまり会社が倒産しなくなった。そこから総会屋をビジネスにしたシノギが台頭してきた。

1982年に法律が改正されて総会屋に利益供与してはいけなくなり、多くの会社が総会屋を締め出そうとした。1997年に第一勧銀・四大証券事件が起き、これが決定打となって総会屋に利益供与する会社はほとんどなくなった。

その後、暴力団は非常に幅広い活動をするようになり、ありとあらゆるお金の動くところに介入してきた。しかし1992年に暴対法が施行されてから暴力団はマフィア化して地下に潜る傾向が強くなった。

山口組の分裂によって暴力団の力は弱まる。日本の経済の発展とともに大きくなった暴力団だが、今の日本経済は暴力団の存在を許さない、暴力団を利用したりお金を払ったりする経済システムではなくなった、と主張している。


分裂した原因はお金と人事にある

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暴力団を題材とする書籍を多く出版してきた溝口敦。その溝口敦の主張をザックリとまとめてみる。

山口組は1915年に設立され今年でちょうど100年。両組織の勢力は六代目山口組が59直系組長で組員数は約7000人、神戸山口組は13・4直系組長で約3000人。六代目山口組組長の出身母体である弘道会は名古屋が拠点、神戸山口組組長の母体である山健組は神戸が拠点である。

分裂の原因の1つはお金集めの厳しさにあるという。六代目山口組では毎月会費として直系組長から月に1人115万円、積立金が10万円、飲料水や日用雑貨の半強制的な購入を義務付けられておりこれが約50万円前後。さらに司忍組長に対して中元に合計5000万円、歳暮に合計1億円、誕生日にも合計1億円を直系組長が捻出しなければならない。

これらを合計すると毎月7000万円ぐらいの会費が集まり、3000万円が司忍に渡っていたとみられる。直系組長1人当たり年間3000万円ぐらいを山口組総本部に納め、司忍組長の年収はおおよそ10億円だと推測される。

暴力団は任意団体であるため課税されていないが、暴力団の上納金を私的流用していたとして工藤会の野村悟総裁が脱税で逮捕されており、会費などで集めたお金も課税すべきという方針になりつつあるようだ。

執行部というのは若頭、若頭補佐、本部長でだいたい10人弱。山口組で執行部を経験した5人ほどが神戸山口組へ移った、この人達は司忍の金銭データを持っている可能性がある。

もう1つの分裂の原因は人事の独占にある。六代目山口組の司忍組長、高山若頭、竹内若頭補佐が弘道会の出身。六代目、七代目、八代目まで弘道会が独占するのではないかとの危惧がある、とのことだ。


神戸山口組の会費は10分の1

神戸山口組は新しい会費システムを作り、役付の直系組長は月額30万円、中堅組長が20万円、平の組長が月額10万円とのことでだいたい山口組の10分の1程度の会費で済ませられる。さらに神戸山口組は中元や誕生日に組長への贈り物は禁止にする方針で、金がかからないようになっている。

司忍組長はイタリア製ブランドに身を固めてオシャレであるが、井上組長はユニクロを着ていてマスクなども再利用している、という話まであるという。

これまでは組を割って出たほうが負けることが多かったが、今回はちょっと違うようで、六代目山口組が後継人となっている酒梅組は神戸と付き合うと言い始めている。住吉会の加藤総長は神戸山口組にシンパシーを感じているようで、侠道会、旭琉會も神戸に接近するかもしれない、と分析している。


最終的には神戸山口組が勝つ

今回の会見で注目すべきところは、溝口敦が『最終的には割って出た側の「神戸山口組」が勝ってしまうんではなかろうか』と発言したことだ。

山口組が分裂してから溝口の書いた記事は六代目山口組を非難し、どちらかというと神戸山口組を擁護するような論調が見受けられる。ここまでハッキリと言うということは、余程なにか神戸山口組に勝算があるのか、なにか秘密兵器でもあるのだろうか。


各地での小競り合いが大規模な抗争に発展する可能性

抗争になるのではという質問に対して溝口は『抗争するとその組織の上部のトップが組長の"使用者責任"で損害賠償を求められたり、"組織的殺人"などで上部の刑事責任を問われるという法的体制が整備されていて上の者はなかなか抗争をしたがらない。しかし経済的な紛争をきっかけとして各地で小競合いが発生し、それが拡大して抗争に至るということが徐々に起きてくると思う』と話す。

税金の問題で司忍組長は逮捕されるのかという質問に久保利は『税金の問題は世界中の暴力団に対して非常に有効な手法、アメリカでもアルカポネは脱税で捕まったし、この方策は有効。 警察は司法と連携をして税法など様々な方法で暴力団を締め上げていく。この税法の問題がしっかり実効性を実現されればいいなと私は思っている』と述べた。


今の時代はヤクザの社会的需要がなくなった

企業の社長や政治家はヤクザ組織とのリンクがあるのではとの質問に久保利は『私の知る限りでは上場会社の社長でそういう関係性を疑われている人はまずいない。政治家について詳しくはわからないが、暴力団と癒着をしている関係について公共事業が暴力団と関与している、そういう人物はいないわけではないかもしれない。ただ具体的にそれが証明されれば大変な問題になるので、少なくとも今の段階ではオープンにはなっていない』。

溝口は『土地が動き、地上げなどが成立していた段階では暴力団がその経済行為に関与していたことはあったが、現在では非常に珍しいケース。暴力団と交際すると"交際する罪"というのが社会道義的に成立するような時代背景になっているので日本ではそういうものはほぼ無いだろう』。

山口組は弱体化するだろう言っていたがヤクザ組織全体ではどうかという質問に溝口は『暴力団全体が今後ますます数を減らし勢いを無くしていくと見ている。警察庁の統計で見ても暴力団は暴対法施行以来、徐々に数を減らし下げのカーブはきつくなっている。暴力団全体に社会的需要が無くなったということが言える』。

久保利は『社会的需要がなくなった、その需要というのは今まで興行をヤクザがやるとか、不動産の地上げをやるとか、債権回収をやるとか、今まではヤクザがやっていた仕事をどんどん弁護士に取られちゃっている。一番強かった山口組がこういう状態になれば、それは他の団体も同じような宿命になるだろう』。


司忍組長はアメリカに入国できない?

司忍組長は海外のギャング・グループとのコネクションを持っているのかという質問に溝口は『アメリカが司組長の在米資産について凍結したという報道があった。アメリカはある程度、司組長のアメリカにおける経済活動を把握していると考えがちだが、それは日本の警察庁の資料がアメリカに渡り、アメリカが大した根拠も無しに決めたことだと思っている。司忍組長がアメリカに渡ったということは聞いたことが無いし、アメリカに入国できないんじゃないか。入国もできない国に自分の資産をおいたり経済活動をするということは本来ありえない。暴力団は言葉の商売であり、言葉が理解でき言葉を操れなければ恐喝もできない特殊な商売である。 アジアのマフィアとはお友達付き合いということで、覚せい剤や危険ドラッグ以外のシノギは無いと見ている』と説明した。


もっと深く知りたいところもある

この会見では山口組の概要、分裂の原因、今後の展開などを知ることが出来る内容になっていた。

しかしこれだけではまだ疑問は残る。神戸山口組が勝つという根拠はどこにあるのか、ヤクザは社会から排除されてやりにくくなっているというが、ではどうやってお金を集めているのか、企業の社長や政治家はヤクザとの交際はオープンになっていないとあるが、オープンになっていないだけで内密に交際しているのであろうか、まだまだヤクザに関する疑問は尽きない。






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